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『補給拠点』


−合肥戦闘開始数日前−

 「・・・そっちは、壷2つね。あと・・・」
「釜の準備できました、凌統将軍!」
拠点兵長が言いました。
「あそ・・じゃ炊き出ししといてな。」
「分かりましたっ!」
「あとは・・・・、」
補給拠点の準備には手を抜けません。
前線にいる兵士達の士気にも影響がでて勝敗にも繋がります。
凌統と一部の将達は合肥に一足早くやってきて補給拠点の準備を任されていました。
 『補給拠点の作り方 陸伯言著』
という竹簡をまた最初から読み直し、何か見落としてないかを確認しています。
あとはぐるっと拠点を歩いて不具合の有無を確認、倉庫の中の兵糧を確認すればこの拠点は完成します。
「さぁ〜て、あと一カ所作らないといけないってねぇ・・・。」
頭をかきかき、歩く凌統。
ちょっと気怠そうですが仕事に手落ちは今までありません。
「・・・んじゃ、こんなもんかなぁ。」
竹簡を巻きながら、ピイッと口笛を鋭く一回。
付近で草を噛んでいた愛馬がやってくると拠点兵長に言いました。
「じゃあ、あとは頼むな。」
「お任せ下さい!」
馬に乗ってもう一度何も落ち度がないかザッと確認すると凌統は次の拠点へと向かいました。

−その5分前−

 「大変だ・・・・。」
「いかがなさいました、呂蒙殿っ?!」
「・・・甘寧がいない。」
「はぁっ?・・・出航準備中滾られて落ちましたかね。」
「悠長なことを言って居る場合ではないぞ・・・。あやつの水軍は欠かすことができんっ!」
(・・どうせそのうちひょいっと現れますって・・・)
「陸遜、」
「えっ?あ、はい。」
「甘寧を探すんだ。先に合肥入りしている連中にも伝えなくてはならんっ!・・・伝令班を招集しろっ!早馬を出せー!!」
(あーあ、甘寧殿がいなくたって戦には勝てますよー呂蒙殿・・。)

−補給拠点 凌統が到着する3分前−

 昔の拠点を再利用すると言うことでしたがちょっと荒れているにも程がありました。
先に付いていた拠点兵達は一部の物資を入り口に置いて草むしりと破損箇所の修復から始めなくてはならないほどだったのです。
そして彼らはまだ拠点の修復にかかっていました。
日も良い具合に昇ってきた頃。
 「報告っ!兵長殿、」
慌てた兵卒がやってきていいました。
「怪しげな壷が放置されている模様っ!」
「つぼ〜?だと。」
兵長は持っていた鎌をその場に突き刺すと兵卒と問題の壷を見に行きました。
「・・まだ到着はしていないよな?」
「はい、大きな物資は凌統将軍の隊が持ってくることになってます・・・。」
「ふぅむ・・・。」
「どうしましょう・・。心なしか、我が軍の壷と比べて大きいような・・・。」
「確かにな。将軍が見えたら報告しよう。それまでは誰にも近づかせるなよ。」
「わかりました。」
ともあれ兵長は再び草刈りに戻りました。

−凌統到着−

 物資と共に移動する凌統隊は端から見るとキャラバン隊のようです。
かっぽかっぽと彼らはようやく最後の拠点に到着しました。
「か〜・・・草ぼうぼうだったの・・・。で、なに、壁面は・・修復工事してんの。」
訪れに気づいて拠点兵長がやってきまいた。
泥まみれで手にした鎌は草の汁がしみこんでいます。
「やっかいそうだな〜、兵長。」
「お待ちしておりました、凌統将軍。草刈りもほぼ終わり、修復作業もこの一区画が最後です。」
「そぉかい?・・・ならいいんだけど、物資の搬入は?」
「はい、可能です。」
「んじゃま、始めようか。」
「はいっ!」
凌統は馬から下り、兵士達は各々作業に取りかかります。
彼は再び竹簡を開くと作り方に沿って指示を出していきました。

−港にて−

 「呂蒙殿、やはり甘寧将軍はいないようです。」
「最後に目撃されたところは?」
「物資を整理していた凌統殿と喧嘩していたという目撃情報以来、ありません。」
「・・・結構前じゃないか。」
「凌統殿の隊はすでに合肥入りしていますし・・・。」
呂蒙は大きなため息を一つ。
頭をがりがりかくと言いました。
「・・合肥の凌統隊に伝令だ。それと・・甘寧の副官を呼んでおけ。」
「分かりました!」
「あと必要だと思ったことはやっていい。・・俺は一旦本城へ帰る。」
「殿に報告ですね?」
「ああ。本城のどこかに案外いるかもしれんしなぁ、探してみる。」
「分かりました、おまかせくださいっ!」
供手して出て行く若い背中を呂蒙は再び大きなため息で見送りました。

−凌統と壷1−

 「で、謎の壷って・・これかい?」
「はぁ、最初来たときは無かったのですが、いつの間にかここに。」
補給拠点の一番すみっちょ、櫓の影にそれはありました。
「うちのよりは・・・ちょっと大きいようだねぇ。」
「はい。それに、古びた感もあります。割ろうにも・・・風の噂で蜀の諸葛亮が壷兵器をあみ出したと伝わっているので・・いささか抵抗があります。」
凌統は腕を組み、壷を見下ろします。
「確かに・・そんな噂もあったし、割って爆発したんじゃ元も子もないからなぁ。」
「それで将軍がいらっしゃるまで待とうということになったのです。」
「俺にそんなこと聞かれてもなぁ・・・。俺からもりょもさんや陸遜に聞かなくちゃならんし・・・。」
伝令でどちらかの指示を待っても彼らの到着を待っても今日中に壷をどうこうはできません。
「しょうがない、見張りを一人立てて、これは放っておこう、りょもさんの到着までだ。頼めるか?」
「はい、手配します。」
「じゃぁ、それでいこうか。」
こうして壷はひとまずその場に放置と言うことになりました。

−次の日・朝−

 凌統は幕舎に飛び込んできた兵長の声でおこされました。
「りょ、凌統将軍っ!!」
「んぁ・・・なんだよ・・朝から・・。」
「つ、つつつつ」
「つがどうした?」
兵長は相当動揺しています。
ぼさぼさの髪をかき、大きなあくびを一つ。
兵長も大きく深呼吸をしていいました。
「壷が動きましたぁっ!!」
「・・はぁ?」

−凌統と壷2−

 髪も満足に結わないまま凌統は馬に飛び乗るとあの補給拠点へとやってきました。
拠点兵達は皆門の前に集まって中へ入ろうとしません。
「んで、壷は?」
「はい・・あそこに・・・。」
みれば確かに壷は櫓の側から一番近い門の前へと移動していました。
「動いたのを見た人ー。」
「「「はーい」」」
聞けば3人の兵士が手を挙げました。
「三人も見てんのかい・・・。」
どうやら幻とかそんなのではなさそう。
ひっつかんで来た獲物のヌンチャクを確認し、壷に向かっていきます。

てくてくてく。
・・・・・・。
てくてく、てくてくてくてく。
・・・・、・・・・・・・・・。
てくてくてく、ピタ。
・・・・・・・・・・・・。
−ジャラ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

そして凌統がヌンチャクを振りかぶった瞬間、壷は自らごろんと倒れると凄い勢いで転がっていったのですっ!!

『ぎゃぁっ!!』

一同の大きな悲鳴。
一番側にいた凌統は一瞬驚きで真っ白になっていましたがすぐ我に返りました。
そして何事もなかったかのように兵達の所へ行きます。
「・・・諸君、やっかいなものは無くなった。各自、任に付くのだ。以上!」
ヌンチャクを軽やかにしまうと馬に跨り、凌統はひとまず幕舎へ戻りました。

−伝令、到着−

 凌統が幕舎に戻り朝の身支度を終えた頃、呂蒙からの伝令が到着しました。
「・・・・えっ、甘寧が行方不明だってぇ〜?」
「はい。軍師殿達が血眼になって探しておりましたが、未だ行方解らず・・・。」
くぅっと涙ながらに語る伝令。
「別に戦死したわけじゃないんだから・・・。わかった、こっちでも探してみるよ、不本意だけどねぇ。」
「よろしくお願いします。呂蒙殿が早めに合肥入りするそうです。それと、陸遜殿が魏の急襲に備えよとも、言付かっております。」
「解った。は〜、面倒だっつの・・・。」
「では、これで・・・、」
「あ、そうだ。」
凌統は呼び止めます。
「軍師達に伝えてくれるか。」
「は、承りましょう。」
「ある補給拠点に見慣れない壷があるんだ。うちのと比べてでかいし、古い。それに・・・、」
「それに?」
凌統は神妙な面持ちで伝令兵に迫ります。
「それに・・・、」
なま暖かい風が幕舎をすり抜け、灯りが揺れました。
「・・・・・あれはさ・・・・動くんだよ、勝手に・・・。」
「・・・・・(ごっくん)」
伝令は生唾を飲み込み、いささか顔色が悪く見えます。
「う・・うごうごうご、動くなどと・・そんな壷が・・・。」
「俺が到着する前からあったそうだが、目撃者がいるんだよ。蜀で怪しげな壷兵器を作ったとも聞いてるから、急ぎ伝えて答えを持ってきてくれないかい?」
「わ、解りました!では、急いだほうがよろしいですねっ!出立しますっ!!」
伝令は供手すると馬を駆って行きました。

 「・・・さて、いつりょもさんが到着するかねぇ。」
にやりと一人で笑う凌統。
甘寧のことはすっきりさっぱり忘れていました。

−合肥、戦闘開始(凌統と壷・3)−

 甘寧不明の伝令が到着した次の日、合肥の地は開戦状態となりました。
たまたま出会い頭にぶつかった双方の兵士から飛び火し、将達が到着する前におっぱじめてしまったのです。
呉は総大将他呂蒙や太史慈も到着したばかり。
しかし疲れたとはいってられません。
「・・・しょうがない、俺の必殺技が使えんが・・あきらめよう。」
因みに呂蒙の必殺技は「甘寧召還」です。
「・・動きに何か引っかかりを感じるな・・。殿を守れ!奇襲に気を付けよ!!!」

 本陣で呂蒙が指示を飛ばしているとき、凌統は例の補給拠点にいました。
「やれやれ・・・ちょっと体力まずいっての・・・。」
ヌンチャクを収め、手の甲で汗を拭います。
まだ敵兵こそ来てはいませんが、いつ来てもおかしくない状況です。
「さて・・壷を割るかねぇ。」
「すいません、まだ炊き出しが終わったばかりでして・・・。」
申し訳なさそうに兵長が言います。
「良いって事よ。そのための壷だろう?さぁて・・・。」
と、目に入ったのが例の壷でした。
傍らには兵士が立っています。
「・・・壷・・・・帰ってきたんだ?」
「は、はぁ・・・。どうするわけにも行かず、こうして一人立たせておりました。」
「ふぅん・・・。」
凌統はヌンチャクを一振りし、手近の壷を一撃で割りました。
中にはホカホカの肉まんが2つ、入っています。

・・・ぐきゅるるるる〜・・・。

お腹が鳴る音がしました。
「俺じゃねーよ。」
と、凌統。
「私でも、ありません。」
これは兵長。
そして二人が視線を送ったのは壷の傍らに立つ兵卒。
「ち、違います!自分はまだ食べたばかりでっ!!!」
慌てて首を左右に振る彼。
「・・・じゃあ誰が腹の虫をならしたんだろうなぁ?」
3人が見る目線の先には、古びた壷が一つ。
・・・ぐるるるるる〜・・・・・。
再び鳴りました。
明らかに、壷からです。

その時です!
「張文遠、参るっ!!!」
というかけ声と共に魏将張遼がなんと本陣近くに現れたのですっ!!

「ちっ!まずいっ!!」
凌統は慌てて馬に跨ると本陣へとかっ飛ばしていきました。
もちろん、手には二つの肉まんを持って。

−甘寧は?−

 本陣付近では急襲で指揮系統が乱れ、総大将孫権と呂蒙は窮地に立たされていました。
「りょ、呂蒙、なにか良策はないのかっ?!!」
「あ、あるにはあります、しかし・・・。」
「しかしなんだ?!」
その時です。
「殿ー!!!」
「おお、凌統っ!!」
そうです、凌統が駆けつけたのです。
「ご無事ですかい、お守りに参りましたよっ。」
「お守りと言うなっ!・・・しかし、助かったぞ。」
そう安堵したのもつかの間、本陣の防衛網を突破した張遼達が突っ込んできたのです!
「覚悟ぉー!!!」
高く飛び、間違いなく頭上から技を彼らに向かって繰り出そうと獲物を振り上げた張遼!
「「「まずいっ!!」」」
しかし逃げては大将の首がっ!!
そこで呂蒙は戟を振り上げ、叫んでしまったのです。

「江東の虎に忠誠を近いし水賊、鈴の申し子!甘寧、召還!!!」

カッ!とまばゆい閃光が張遼と呂蒙達の間に光ります。
そして同時に発動した張遼の技を受けたのです!

ガキンッ!と金属の当たる嫌な音がしました。
なんと、壷が張遼の刃を受けているではありませんかっ!!

「あの壷は・・・!」
凌統は呟きます。
「お、俺は甘寧を召還したのだが・・・壷?」
よく考えれば甘寧は行方不明。
咄嗟に叫んでしまったとはいえ、壷が現れたのです。
「いったい、どうなっているのだ、呂蒙。」
「さぁ・・・」
しかしまだ壷と張遼は身構えたまま。
「つ、壷を兵として利用してくるとは・・敵ながら見事よ!」
張遼は兵士達に引くよう命じます。
「一旦引け〜!!次の作戦に移行するぞっ!!!」
鬼神はそう大声を張り上げながら、本陣から引いていきました。

−あの補給拠点にて−

 張遼が去り、膠着状態となると夜がやってきました。
いつの間にか姿を消した壷は、あの補給拠点に戻っていました。
「さて・・いいんですかい?殿。」
「うむ。割っても大丈夫だろう。な、呂蒙。」
「俺の技が鈍ったとも思えないし・・確かに手応えがあったのだ。この壷は・・・間違いなく。」
「甘寧だってのか?・・・・後悔してもしらねーぜっ!!」
エモノを構える凌統と数歩下がる、呂蒙に孫権。

「はぁぁぁぁ・・・・」

ヌンチャクを構え何時になく精神統一し、気を漲らせます。
赤い闘気が全身をとりまくと、かけ声と共に無双乱舞を放ちました。

パァンッ!!!

補給拠点に居座っていた壷はついに割れました。
そして空高く舞上げられたのは、甘寧。

「・・こんなところかな。」
かっこよくヌンチャクをしまう凌統の後ろで呂蒙が真っ白になった頭を何とか稼働させていました。
「なぜ甘寧が・・・壷に・・。というか、どうやって入ったのだ・・?」
「甘寧、甘寧っ!!」
孫権は甘寧を揺すりますが、彼は気持ちよさそうに眠っているのか何をやっても目を覚ましませんでした。

−合肥戦・終了(補給拠点にて)−

 戦は勝利で終えたものの甘寧は目を覚ましません。
招集のかかった陸遜もやってきました。
「・・・それで眠ったままだと。」
「そうなのだ・・。しかし俺の召還には反応するのだ。さきほど何度か試したが、ちゃんと現れる。」
「・・単純にねむってるだけじゃないですかぁ?」
「だが目覚めんのだよ、陸遜。」
二人が腕を組んで悩んでいる後ろで、凌統は兵長から肉まんの差し入れを受け取っています。
「もう火ぃ付けるしかなかったりしてねぇ。」
はむはむと肉まんをほおばる凌統。
キラーン☆と目が光ったのは火計の申し子、陸遜。
「もう凌統殿、もっと早くそれを言ってくださいねっ!」
取り出したるは火打ち石。
カチカチカチッ!とリズミカルに叩けばそこにはポッと種火が産まれました。
「さぁ、大きくなーれ、大きくなーれっ!」
ふーふーと息を吹きかけて火を育てる陸遜。
因みに火を付けたのは、甘寧の足です。
「凌統、水を用意しろっ!捕縛用の網を持ってこい!!」
「って、りょもさん、ここ本城じゃないから網なんかないっすよ!!」
本城には無双発動時の俊足を使って逃げる甘寧用に対甘寧捕縛網があるのです。
カッ!と甘寧は眼を見開きました。
そして次の瞬間、
「た〜ぎるぜ〜〜〜〜〜!!!!!」
と叫びながら何処かへ走っていってしまいました。
「「「・・・・・」」」
あっけにとられているとザパーン!という川に落ちた音がしたので3人はひとまずは肩をなで下ろしましたとさ。

 甘寧がどうして壷の中に入っていたのかは定かではありません。
しかし凌統がいうには「あいつ無駄に壷割りすぎだっつーの」と言っていたところからもしかしたら補給拠点用の壷達に報復されたのかもしれません。
これ以来不可思議なことは起きなくなりました。
そして甘寧はおもしろ半分に壷を割るようなことはしなくなったそうです。

 「・・あん?俺がどうして壷ん中にいたかだって?・・・んなもん、凌統と喧嘩してた時足滑らして壷の上に落ちたんだよ。
入ったものの、出られるわけがない。だから中で寝てたんだよっ!」
ということで、凌統達の見た壷の話をしても覚えてないと言ったとさ。

めでたし、めでたし。






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